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入歯の鋳型

材料が決定すれば、それに応じた鋳型をつくらなくてはならない。金属をとかすには、六〇〇度前後から一一〇〇度ぐらいの熱が必要だから、その熱に耐えうる鋳型でなくてはならないわけだ。この鋳型ができれば、つぎはいよいよ鋳造である。鋳造には、?金属を鋳型に圧迫していれる方法と、?遠心力によって鋳造する方法、それに?真空圧によってなかのほうに入れてしまう方法の三つがあるが、歯科医はこのうちのどれか一つを選択して、鋳造する。こうした歯科医学における鋳造の技術は、もちろん一般工業のそれから導入したものであるけれども、かなり高度で精巧な技術であることはいうまでもない。航空産業の技術者によってジェット機のエンジンが開発されたとき、かれらが歯の鋳造法を研究して大型化し、その技術でもってジェット機のことをりっぱに証明しているのである。こうしてつくりあげたクラウンは、患者が第四回めの来院をしたとき、テンポラリー・クラウン、あるいはテンポラリーの充てん物をとりのぞいたうえで、試適される。このときの歯科医のチェック・ポイントは、よく歯頭にあっているか、かぶせたものと歯とのあいだに、すきまはないか、かみあわせはいいかどうかといったことである。そして、それらすべてが申し分ないということになると、永久合着用セメントをつかって、歯にクラウンやインレー、あるいは部分冠やブリッジをセメント合着していくのである。なお、ここでくわしくのべてきた、歯の全部を被覆するクラウンのほかに、一部だけを残して部分的に被覆する、部分被覆冠というものもある。スリークオーター・クラウン(旦4冠)、エイトセブッークラウン(7一8冠)、プロイシマルーハーフークラウンなどとよばれているものだが、これらの製作作業のプロセスは、インレーやクラウンについてのべたプロセスとおなじなので、あらためて詳述することは割愛しておこう。ブリッジの場合は維持のための支台歯が、前後にあればいいのだが、欠如した歯が一番奥の歯であって、それのささえを前のみの残っている二本の歯を支台歯にして、そこからブリッジを奥にのばす延長ブリッジという方法をとることもあるが、一見クレーンのようなかたちをしたこの延長ブリッジにしても、なにしろ体重とおなじ程度の咀嚼圧力がくわわってくるのだから、材料の力学的な面からみても、ささえきれなくなってしまい、金属疲労のためにブリッジが切れたりまがったりして、土台の粘膜にくいこみ、歯肉に炎症をおこすといった障害をおこしてしまう。そこで、そんな障害があるのならば、臼歯の場合はいっそのこと顎の骨に穴をほってそこへ義歯を植えこんでしまうという、インプラント義歯(植えこみ義歯)という特殊な方法をおこなっている一部の臨床家もいる。ちょうど骨折したとき、その部分を金属でつなぐのとおなじように、顎の骨にほった穴のなかに金属あるいはセラミックスやサファイアを植えこみ、そのうえをクラウンやブリッジで補てつすれば、機能も感覚も自然の歯のそれに近づくではないか、というわけだ。ただしこの植えこみ義歯は、理論的にはともかく、臨床的には、現在のところはまだその成否を判断するほどの普及力はみせていないので、わたしたち歯科医にとっては今後の研究課題として残っている方法なのである。