不活性ガスを封入することでフィラメントの劣化を防ぐことができるようになったというものの、完全ではなかった。さらに、いかに熱の伝わりにくい不活性ガスとはいえ、電球内部でのガスの対流が避けられないため、フィラメント周辺にはどうしても、相対的に温度の低いガスがめぐってくることになる。フィラメントの温度低下が、やはり問題になってきた。温度が低下すると明るさが減少し、電球の効率が低下する。この問題を解決する方法の一つとして、1921年に日本の三浦順一(東芝)が二重コイル電球を発明する。らせん状にしたフィラメントをさらに巻いて、二重のらせん構造にしたのである。対流によるフィラメントの温度低下が少なくなり、電球の効率はさらに向上した。1935年にはフランスのアンドレークロードが、窒素ガスに代わって、窒素よりも分子量が大きく、熱を伝えにくいキセノンやクリプトンなどの不活性ガスを封入した。電球内のガスの対流をさらに起こりにくくさせることによって、タングステンフィラメントの温度を高くすることができ、効率も上がり、輝度も上げることができた。断熱性が上がったために小型になり、クリプトン電球はより点光源(全方向に対して決まった色の光を均一に放つ光源)に近いものになった。電球の技術開発の歴史は、明るさと寿命をいかに同時に上げるかという課題を解決する闘いでもあったが、不活性ガス入りタングステンフィラメント電球の完成によって、その闘いも終わった。明るさと寿命の関係は、設計の問題になったのである。白熱電球の特性である光の明るさ、消費電力、光の色温度は、すべて電圧が高いほど大きくなり、寿命は短くなる。